大分大学 OITA UNVERSITY
所在地
大分大学旦野原キャンパス
教養教育棟実験研究棟2F
研究テーマ

液晶光バルブにおける自己組織化構造に関する研究

 液晶光バルブは,ネマチック液晶,誘電ミラー,光導電体を2枚の透明電極付ガラス板で挟んだ構造をしています。液晶側の光を光導電体側にフィードバックすると,ある条件で液晶分子の傾き角に関する双安定性が生じます。その結果,光フィードバックのかけ方や印加電圧,書き込み光強度,光学配置を変化させることによって,非常に多彩な自己組織化パターンが出現します。これらのパターンは環境に応じて自律的に変化し,ある環境下では,静的なパターンが不安定化して非平衡状態となり,時間的空間的に複雑に時間変化します。これらの自己組織化構造のダイナミックスの研究をしています。
 
液晶光バルブの構造 光フィードバック光学実験系 液晶光バルブにおける
花弁状パターン

液晶の電気対流に関する研究

 負の誘電率異方性を持つネマチック液晶に導電性不純物を添加して低周波電場を印加すると,ある閾値以上の電圧で電気流体力学的不安定性による対流が生じます。印加電圧を増加させると,この対流は秩序正しい対流構造から乱流構造へと逐次変化していきます。この対流構造は,外部から電気エネルギーが流入し,その一部が対流運動によって散逸される状況で発生する非平衡散逸系に特徴的な構造です。このような構造は「散逸構造」と呼ばれ,自然界に一般的に存在するものです。散逸構造の研究は,非線形科学,複雑系科学の中心的な研究課題であり,液晶の電気対流は,実験的な制御が行いやすいことから,活発に研究が行われてきました。当研究室では,画像解析によって液晶電気対流の形成メカニズムを研究しています。また,粘度計を用いて,電気対流に起因する液晶の粘性挙動を調べています。
 
ウイリアムスドメインと呼ばれる
定常的対流
格子パターンと呼ばれる
定常的対流と乱流が混在した状況
レオメーター
(粘度計)

液晶を用いた秩序形成動力学に関する研究

 一般に対称性の破れを伴う相転移が起こると,トポロジカルな欠陥が出現し,その後系が安定な平衡状態へと遷移する過程においてこの欠陥は消滅していきます。このトポロジカルな欠陥の消滅過程は,スピノーダル分解や核生成-成長の問題として古くから研究されています。液晶系では,他の系では観察することが難しい様々な種類のトポロジカルな欠陥の運動が観察できます。この性質を利用して,2次元イジング系および2次元XY系におけるディスクリネーション(トポロジカル欠陥)の消滅過程を観察し,欠陥数,相関関数,密度相関関数を求める画像解析を行い,動的なスケール則の存在,欠陥の分布則などを実験的に明らかにしました。また,液晶配向壁のzigzag不安定性を利用して,1次元スピノーダル分解の定量的な実験結果を得ることに初めて成功しました。
 
2次元イジング系のパターン
明,暗の領域が
up-spin,down-spinに対応
2次元XY系のパターン
黒帯の交点がvortex, antivortexに対応
zigzag配向壁の時間発展
(上から下方向)
1次元イジング系のスピノーダル分解と
考えると kinkがIsing壁に対応